異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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「ぴーぴー」 「お? ちゃんと上手に呑み込んでくれたみたいだね。薬匙がないとダメかなー、って思ってたんだけど、大丈夫だね。どうせだったら牛乳も人肌位の温度がいいんだけど」 「なんか慣れてないか?」  確かに。女神君やフェガロ君と違い、私を扱うのに慣れている。……変な意味はない。 「前に小鳥を飼ったことがあるから。後は患者の看病の応用だよ」  そう言って、もう欠片を差し出してくれる。私は先程のように口を開け、カエルム君はパンを喉の奥に差し込む。 「流石は医者の息子さん。この手当てもお前がやったんだろ?」 「ハハハ、お褒めの言葉を頂き有り難うございます。アルに頼まれてね。骨は折れてないけど、派手に怪我してるから暫くは安静にした方がいいよ。僕らにとっての血の一滴は、小動物にとって命の一滴だから」  それは私にとって朗報だ。添え木されてたので、骨でも折ったかと思ったが、安静にするためだったようだ。怪我だけなら、早く治るだろう。そのためにも彼が言うように暫くは大人しくしていよう。  カエルム君は私を治療してくれて、そして今は食事を与えて貰い、色々とお世話になっている。命の恩人だ。  彼の知識と行動に感謝しきれない。そう思っても、優しげに私を見る彼には私の声は届かない。  お礼が言えたらなぁ…― 「ふーん。……そういやお前さ、高等部行かないんだって? 中等部卒業したら出て行く、って専らの噂だけど本当か?」 「本当だよ。本格的に医療の勉強しようと思って。そっちの学校に行くつもり」  医療?  医者の息子って言われて否定しなかったから、家の医者の跡でも継ぐのだろうか。  カエルム君は小さく頷き、私にパンを差し出す。それを呑み込もうとする私。 「じゃあ卒業後、次に会う時は戦場かもな」
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