異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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 衝撃な言葉を聞いて、私は驚いて息を飲んだ。だが丁度喉の奥にパンがあった為、つっかかり、息が止まった。 「げふっっ、ぐ、げふっ、げっ、ぐっぐふっ、ぐふっ」  女の子らしかぬ声が出た。でも別にいいだろう、だって鳥だもの。  思いっ切り吐き出し、これでもかと言うほど肺に空気を入れる。苦しい。咳き込む度、空気の冷たさが喉奥を傷めつける。極めつけは、元々筋肉がない腹筋を酷使していること。  そんな私にカエルム君は豆鉄砲を食らったようで、心配そうな眼差しで見守っている。  ああ、可愛い。可愛いとか言ってる余裕はないんだけど。そしてその髪型で私を見ないで欲しい、笑ってしまうから余計苦しくなる。   「軍医になるつもりなんだろ?」 「うん。だけど、フェガロとは会いたくない」  そう言われるとは思わなかったのか、フェガロ君は目を見開いて、唖然としている。ショックを受けているようだった。  それもそのはずだろう。友人にそんなことを言われたら誰だって傷つく。それが仲が良ければ尚更のこと…―元の世界の友人とはよく喧嘩したっけ。  カエルム君は、慌てて顔の横に手を振った。 「あっ! 別にフェガロが嫌いってことじゃなくて! 友達が傷付いて倒れている所見たく……ない…………かなって……」  最初の勢いが段々萎み、声も小さくなり最後は消えていった。そして、私にパンを与える手も止まった。どうしたのだろうか、彼の顔には先ほどの笑みはない。  なんだろう、この微妙な空気は……。  パンが食べたい。けど不穏な空気が漂う中で「ぴー」なんて鳴けない。日本人の空気を読む能力がちゃんと発動したからだ。けれど、今はいらない。空気が重いし、私が場違い過ぎるし、話を盗み聞きしているようでバツが悪いからだ。  聞くきはないのに強制的に聴かされそう。新手の嫌がらせだろうか。 「その……僕は、友達が傷付くのが嫌だ。家族が傷付くのも、嫌。大切な人達が傷付くのは、悲しい。僕は……僕は、戦うのが恐いんだ。でも……大切な人がいなくなるのも、恐い。兄さん達が、突然いなくなったように、又、誰かがいなくなるのが、恐いんだ」  ポツリポツリと話す彼の言葉に、フェガロ君は獣の耳をピンと立たせ、静かに出方を窺っている。  暖炉の薪の爆ぜる音がよく響く。
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