異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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 その後、残りのパンも牛乳も、全て私のお腹に入った。  それを確認したフェガロ君は「さて寝るか」と就寝の合図を送った。  コップと本を持つ彼の後に続いて、袖で目を擦るカエルム君は、私にお休みの挨拶して部屋から出ていく。  お休み。  さて、私も寝よう。もう大分夜も遅い。  毛布に身を預け、瞼を閉じる。 ――だが次の瞬間、扉の外から聞こえる彼らの楽しげな会話の内容によって、一気に頭が覚醒した。 「もし、さっきの言ってた世の中になったら、僕ら貴族は路頭に迷うかもね」 「俺の家は失業だな。だが、世の中平和になるんだったら安いもんだろ」  へぇ、貴族ね…………貴族!?  貴族だと? 彼らが貴族?! 私には縁も所縁もない貴族……私はそんな彼らに助けられたのか。  貴族の子に? 待って、そもそもなんで貴族の子が夜中に歩き回っているんだ? ここはいったい何なんだ? どこなんだ? それにそんな子達が、なんで戦場に行く話をしたのだろうか、ましてや貴族。  その夜、貴族、戦場という言葉がお互い頭の中でずっとグルグル回り、ついには朝日が顔を出した。寝る前に、朝日を再び拝めることを願ったが、全く嬉しくない朝日を拝むことになったのだった。
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