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人生バードモードに突入しました
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結局一睡も出来なかった。
暖炉の火は疾うに消え、薪の燃えさしからくすぶる煙は、排気口の煙突へと流れている。そこから外の澄んだ空気が入り込み、刃のような冷たさを吸うと、つんっと鼻の奥へ通った。
その冷たさが、私の肌を容赦なく刺しては、体温を奪っていくので堪らない。体はすっかり温かさを忘れてしまい、細かに震えて身を守ることしか出来ずにいる。
目の前に暖房設備はある。が、動けず、助けの声も出ずではどうしようもない。誰にも使われないのなら、備え付けのインテリア同然だ。
本当なら、今すぐに火を灯したい。
人間だった時なら、自分で、何でも思うように動けるのが当たり前だった。
しかし今では、火を灯す所か、助けも呼べず、なにも出来ない。これでは只の役立たずである。随分と惨めな者になってしまった、もしくはそれ以下かもしれない。もしも、こんな状態がこの先ずっと続くなら、ちゃんと生きていけるか不安しかない。
なんと自分はちっぽけな存在になってしまったのだろう。
自分の体が情けなくて、嫌になりそう。
そんな風に自嘲する私は一羽、毛布の海へ潜り込んで目の前の現実から逃げた。そして早く外が明るくならないかと、待ちわびて目を瞑る。
だが、一向に夢の世界は現れやしない。
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