人生バードモードに突入しました

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 どのくらい、その無意味な時間を貪っていただろうか。  瞼の裏を眺めていたら、色が黒から赤へとゆるりと変わった。それが、旭が顔を出した合図だと、すぐに分かった。  何故ならば、暖かくて物体のない“それ”が、私の氷のような体を優しく溶かし始めたからである。“それ”があまりにも気持ちよかったもので、成すがままになっていたら、徐々に焦がす熱さに変わっていく。  それに耐えかねて、そっと毛布から顔を出した。  すると、目に、真っ先に黄色の光の矢が飛び込んで来た。  その眩しさに屈せず前を見据えると、光の矢はカーテンが閉められていないガラス窓から、真っ直ぐ伸びて、部屋中を明るく照らしていた。  赤、青、緑、と万華鏡のように、チカチカと色が変わる埃は光の矢に纏う。  外の木々は風が撫でると、星屑の形をした影がサワサワと揺れた。  光が、輝きが、影が、三者三様に踊り合う。  それらに魅入って惚けていた私は、気づかぬ間に太陽光を体隅々に受け止め、心にまで深く止まっていた。  その輝きが、大地の命を育んでいると思うとなんと美しいことだろうか。  ーー二日目の朝が来た。
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