人生バードモードに突入しました

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 麗らかな陽光が私を照らしている。  たったそれだけでも、ちっぽっけな私を優しく包んでくれているというのが、とても頼もしく嬉しかった。緩く時間が流れるのが平和だ。  ああ、何だかいい気持ち。心が安らぐような、とっても穏やかな気分だな。  こんなにゆっくり陽光を堪能したことはなかったから、たまにはこうやってのんびりするのも悪くない。ホッと息を吐くと、疲れた心が浄化されて清々しい気持ちに替わっていく。  すると、優しい眠気がゆらゆらと私を誘った。  太陽が揺り籠のように優しく、甘える時間を与えてくれている。木々の擦れる子守唄は波のよう。  頭の中がぼんやり霞み、もう何も考えたくない。  もう少しだけ、こうしていたい。そうすればやっと、眠れそう―― ――やっと眠れる。そう思った。  あともう少しで瞼が閉じようとした瞬間、ザワリと外が騒ぎ、一瞬にして空気が変わった。  部屋にある、全ての窓――三つの窓ガラスが、風に激しく叩かれて、ガタガタギシギシ激しく泣き叫び始めたのだ。  それでも中に入れまいと、彼らは抵抗している。  窓ガラスは今にも外れて、部屋の中へ弾き飛ばされそうである。  更に、木々はザワザワと怒り狂って、千切れんばかりに頭を振り回している。枝は空を切り、鮮やかな木の葉を横に散らす。  歌声は既に何処かへ逃げて行った。代わりに地鳴りのような唸り声が響き渡る。  おっかなビックリ。肩をすくめて、身を毛布に沈める。しかし、ちっぽっけな私に毛布一枚の盾はとても心細かった。  たが、不安もなんのその。その恐怖の時間は長くは続かず、ピタリと音が止んだ。それも呆気なく。
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