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背後で轟音が響き渡る。
言わずもがな、さっきの灰色の物体が部屋の奥へぶつかったのであろう。考えなくても分かる。
その時の音は凄まじく、ぶつかった衝撃が振動になって部屋全体を揺らした。窓が再びギシギシと泣き、私は上下に揺さぶられた。
後、絶対凄いことになっていそう。片付けとか大変だろうな。
若干他人事に思っていたら、「……うっ」と何者かが呻いた。
あれ? 人の声?
自分の記憶が正しければ、この部屋に人はいなかったはず。いつ、人が入って来たのだろう。全く気がつかなかった。
しかも灰色の物体が飛んでいった方から声が聞こえて来たけれど、まさか、あれに当たったんじゃなかろうか。
もし当たったのなら、怪我処か大惨事だ。骨折なら未だしも、病院送りな状態だったら……最悪の状況を思い浮かべてしまい、ブルッと震えて青ざめた。
顔知らぬその人の安否が心配になり、外に顔を出す。
すると、被っていた毛布の上から、目と鼻の先にポロリとガラスの破片が落ちて来た。
うわっ!?
「ピッ」
危ない、危ない。危うく自分で自分に傷をつけるところだった。
しかもそれだけではない。籠の中一面、ガラスの破片が落ちている。
体が小さくなった今では、そのガラスの破片がとても大きく見えた。だからちょっと恐い。
それらに注意しつつ部屋全体を見渡した。
すると敷き詰められたカーペットの上には、瓦礫が転がっていた。
ガラスの破片、白い石、灰色の塊。茶色い四角い残骸は、元壁だった物の一部だろう。
そしてポッカリ空いた壁の両端は、破れた壁紙が垂れ下がり、その間に青い空が広がっていた。
片付け大変とかよりも、穴を塞ぐ方が先になりそうだ。
それから、この部屋一番凄惨たる光景になっている一角に目を止めた。
白い砂埃が巻き上がり、確認し辛いが、悲惨なことになっているので目に入れるのは容易い。
灰色の物体が飛んでった行った奥は、二階の梯子まで付いている立派な本棚が並べられていたのだが、そこの真ん中辺りが広範囲で凹み、棚という棚が潰され無くなっていた。
本棚に敷き詰められていた大量の本は、衝撃か震動のせいか分からないが、その殆どが床に落ちて、山になっている。
だか人らしき影はどこにも見当たらなかった。
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