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部屋は寒いし、眠れないし、虫を食べさせられそうになるし、君たちが何者なのか謎だし、場所はよく分からないし、壁は吹っ飛ぶし、生首は喋るし、怖いし、寒いし、恐いし、寒いし!!
「ピーピーピーーー。ピー」
「君達学生が元気であることはとても喜ばしい事だよ。研究熱心の子もいて、自分を伸ばそうと頑張っているのを私は心の底から応援しているよ。でもね、私は学園の守り人であって、消耗品ではないのだよ。だから毎回毎回私をふっ飛ばさないでくれないか?」
生首は一切息継ぎをせずに喋りまくっている。その声量は私を凌ぎ、話の内容も長いため、自分でも私の声が拾いづらい。
「つまりだね、この私をもっと大事にしたまえ。拝め奉りたまえ。そう、私は、学問を司る神の石像なのだから!!」
生首が邪魔だ。今私が話してるのに。
お願いだから何処かへやって! こわいよぉぉ! たすけてーーーー!! 悪、霊、退、さーん!!
「ピピピピピー」
生首は私にお構い無く、今度はカーペットに顔を押し付けて泣き始めた。
「だというのに、おお! 何と嘆かわしいのだ、私よ! 七百年の知恵と歴史が、何故この様な懇願をなさねばならぬのだ! 誰か私に慈悲をくれ! 例え、目の前に犬の亜人の子がいて私を愛してくれるなら、私はきっとその者を愛して止まないだろう!」
そこまで言うと、生首はチラリとフェガロ君の方へ目を向けている。
だが、熱くなっている生首とは裏腹に、フェガロ君はゴミでも見たような、冷ややかな目をしている。
そして私は、二人の間に入る余地がない、とそっと悟った。
ちくしょーー! しかも更に謎が増えた! 亜人って何!?
「ピーピーピーーーーピ」
「あーうるさいうるさい」
フェガロ君は獣耳を押さえながらズカズカと部屋の中に入ると、籠から出ている私をヒョイと摘まみ、中へ戻してくれた。
その時の彼の割りと丁寧な仕草に、一瞬思考が止まった。お陰でスーっと冷静さが戻ってきた。
「寒いな」
一人ごちる彼の口から、白い煙が溢れる。
私はその意見には賛同だ。
そうなのだ。只でさえ寒かった部屋が、穴が空いたことによって、より寒さが増しているのだ。空気を吸うだけで喉が痛い。
ここの緯度ってどうなっているんだろう。私が住んでいた故郷は冬でもこんなに寒かったことがないのに。
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