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ムリ! この羞恥、耐えられない!
「ピーピーピーピー」
私は堪らず、何とか下ろして貰うため、動かせる方の羽と足をバタつかせた。
「うわっ! 暴れるな」
その時、扉からもう一人顔を出した。
「フェガロ何しているんだ、小鳥を虐めて!」
その子は、ぼさぼさの紺の長い髪を足らし、シワだらけのゆったりとした服を着ていた。
昨日と若干印象が違うが間違いない、女神君……じゃなかった、悪魔君だ。
「はあ? 虐めてない。それよりお前、こいつの面倒みろ」
フェガロ君は「ほらよ」と、悪魔君に私を押しつける。
悪魔君の更に後に続いて、ガヤガヤと人集りが入って来た。「うわひでぇ」だの「なんじゃこりゃ」だの、部屋に一歩踏み入れる度、誰かが驚きの声をあげる。
その面々は殆どが男子で、昨夜の虫騒動で覚えた顔ぶれであり、悪魔君と私を取り囲んだ人達であった。
おかけで昨日のことを思い出した。
悪魔君の楽しそうな笑顔と、虫の死骸の断面から流れる黄緑色の液体。
目を瞑ればそれが直ぐに浮かび出てくる。
ああ思い出したくない。夢に出てきそう。
だからこそ、彼の手の中にいるのが凄く不安であった。フェガロ君の元に戻りたいと思った。あわよくば、籠の中に戻して欲しい。
「分かってるって。というか、この部屋何があったのさ?」
「さあな。だが見当はつく」
フェガロ君は肩を竦めた。
私はその際の目撃者なのだが、何故石像が突っ込んできたのかはサッパリ分からない。なので、私はその真相が知りたい。
「それなら私が答えよう」
下で蠢いていた生首が、その場の全員の視線を集める。
「あれはそう、一点の雲を眺めたときだった――」と意気揚々に切り出す生首に、フェガロ君は「黙れ、喋るな、引っ込んでろ」と辛辣な言葉を浴びせた。
「まだ何も言ってないだろう!」
「口を閉じろ。お前がここにいる時点で既に物語っている」
ご立腹な生首を、フェガロ君は鼻で笑い一蹴する。
「ふん、大方、ボーッと空を見ていたところを朝練していた生徒にぶっ飛ばされ、ここに突っ込んだ、ってところだろ」
いやいや、朝練で石像を吹っ飛ばすって、どんな朝練なんだ。
「凄いではないかパーフェクトだ!」
……嘘でしょ?
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