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只のジョークだと思ったのにまさか確定するなんて……。
茹でった体を冷ましながら、拾った情報を整理しようとするも、今までの日常からほど遠い現状に頭が追い付かない。
「何があったのか一瞬で解明するなんて、さては君、エスパーかい?!」
「お前のいつもの日常を言っただけ。そこから推定すれば、誰にでもわかる事。それに俺は学生だ。もっとよく考えろ石頭」
「では私のファンか!」
「人の話を訊けよ、ふざけんな。その耳は飾りか?」
「む? ちがうのか。なら、ストーカーか!」
彼はその問いに答えず、代わりに深い深い溜め息を吐いた。次に息を吸うと、やや早口の押し殺した声で口を開いた。
「いいか、耳の穴かっぽじってよく訊いとけ。俺は至って普通の狐の亜人だ。犬の亜人じゃないし、そもそもお前に興味はない。お前がふっ飛んでぶっ壊れるのはいつものことだ、分かったか! ……ああそうか、お前は石で出来ているからかっぽじれなかったな。悪い悪い」
本気で悪いと思っているのかな? 只のブラックジョーク? それとも悪口?
私はかっぽじる事はしなかったものの、突っ込みたい所が沢山あった。その中で、「亜人」という言葉を耳に引っ掛かけた。
――亜人。
生首はフェガロ君のことを、「犬の亜人の子」と呼んだ。「狐の亜人」の間違いらしいけど、フェガロ君も自分のことを「亜人」と同定していた。
もしかして、フェガロ君みたいな獣耳と尻尾を生やした人のことを、「亜人」というのだろうか。
男子の集団に、耳と尻尾を生やした人がちらほら混じっている。でも、耳の形や尻尾の長さ等の統一性はなかった。
他にも、カエルム君のような波筋入った耳と縦の瞳孔を持つ人や、そのどちらの特徴を持たない人もいる。悪魔君は後者の方だ。
仮説だけど「亜人」というのは、白人、黒人、黄色人みたく、人種の事を指すのではないだろうか。
人種が違うから見た目が違うのかもしれない。
――パン、パン。
「二人とも、そこまで。今やるべきことは言い争いじゃない」
悪魔君が掌で二拍打ち、二人を制した。
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