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一方で「あなたも手伝ってくれる? カエルム」と名指しされた彼は、跨いだ時、縁に足を引っ掛け――ズベシャッという――鈍い音を立てた。
気にせず右側へ行く彼女は、(彼女から見て、左に扉。正面に、石像に潰された二階建ての本棚。右に暖炉と三つある窓ガラス。そこの)一つ窓を開ける。
たちまち部屋に溜まっていた埃が外へ逃げた。
そして、私が入っていた籠を掴むと、窓の向こう先にある雑木林へ放り投げる。
緑の爽やかなさざめきの中、籠はキレイな弧を描きながら消えて行った。
呆気に取られる私達を尻目に、キビキビ動く彼女はクベン――えーと、クベンさん? なんかしっくり来ないな。クベン像……クベン像(頭)でいいか、腕とか無いし――クベン像(頭)さんを持ち上げる。
が、腕が震えている。
彼女は直ぐに下ろした。
「いいかい、君達。教師殿にちゃんと本当の事を自白するんだよ。ダメダメ、私を抱き抱えようとするんじゃない。そんな事しても私は味方につかないよ。それにね、私はそんな趣味は持ち合わせてないよ。色気で誘い込もうったってそうはいかないよ」
その間もクベン像(頭)さんはクドクドと説教をかましているが、誰も聞いている様子はない。
「何をしているんだ、ラージ」
「見て分からない? 証拠隠滅よ」
何か、凄い単語が聞こえた気がするんですが―…
「やっぱり重いわぁ。私じゃ持っていられない。カエルム出番よ、代わりにコイツの頭を持って頂戴な」
「いいけど、どうするの?」
不思議そうな顔のカエルム君は、クベン像(頭)さんを片手で鷲掴みすると、ヒョイと持ち上げた。
ちょと待って、おかしい。
筋肉の“き”の字もなさそうな細腕の持ち主カエルム君が、軽々と片手で持ったのだ。
どういう事?
ラージちゃんが力無さ過ぎるのか、それともクベン像(頭)さんが見かけより軽いのだろうか。
――そんな訳ないよね。だってどちらにしろ、あり得ないし。
ラージちゃんがさっき開けた窓から、更に先を指差した。
その先は、相変わらず雑木林が広がっている。
「じゃ、ここから投げて」
しかし、カエルム君は困った顔をしたまま固まった。
「おい、兎に角早くその雛を何とかしろ! もうここから先生の姿が見えるぞ」と、再び集団の一人が叫んだ。
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