異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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 貴方というのは勿論、目の前の白い人。白い人は銀色に輝く目をぱちくりしていたが、直ぐにふっと柔らかく微笑んだ。白い人はイケメンだが、どこか頼り気がないのできっと殴れば一発で倒れると思う。  だからもし転生した異世界でまた殺されたら、白い人にいちゃもんを付け、転生させるチャンスをもう一度ぶんどる。我ながら狡猾だと思う。  そんな考えを露知らずに目の前の白い人はにこにこ微笑んでいるから、ちょっぴりいたたまれないのは秘密にしよう。  白い人は紙に羽ペンを走らせた。  一、二本足以外の生き物に転生はしないこと  一、守られる存在に転生させること  一、来世で死んだら、わたくし天使と飯島春様が又会うこと  紙には達筆な文字で上三つの条件が書かれ、白い人が空白の所に天使と署名し、私も自分の名前を署名した。  っていうか白い人天使なんだ。いやいや待って、天使っていうのが本名なの?  私が白い人に突き付けた条件に、欲がないねと白い人は笑っているが、私は天使の名前が気になってそっち所じゃない。 「では、行ってらっしゃーい!」  白い人もとい天使さんが声をあげた瞬間、足の下から掃除機に吸い込まれる感覚が……っていうか、キュイイインッて音がするんですけど!? 私はゴミか!  ゴミのように穴に吸い込まれた瞬間、今度は浮遊感が私を襲った。  身体中で重圧を受けとめ、どこにも行き場のない手足をバタつかせた。それでも落ち続けるのは止まらず、自然と体が恐怖に震え始める。  そしてあの独特に腹をくすぐる感覚が次第に耐えきれず、落ちる抵抗を止めて、体を丸くし、何とか地面に着くまでを耐えようとした。  でもここで気がついた。私、地面に着いたら…― 「いやあああああああーー死ぬううぅぅぅぅぅーーーー!!!!」  死んでたわ。
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