人生バードモードに突入しました

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「俺達が何とか足止めするから、その間にお前らそいつら何とかしとけよ」  立て続けに言うや否や、彼らは扉を開け放したまま行ってしまい、部屋が急に物寂しくなる。 「ほらほら、早く」  ラージちゃんは微笑み誘惑的に囁いた。それはまるで、堕落へ落とす悪魔のようだった。 「カエルム、構わないから投げろ」 「思いっきり、飛ばしちゃえ」  彼女の後に続いて、フェガロ君と悪魔君がカエルム君の背中を押す。 「鬼! 鬼畜! 悪魔!」  ある意味正解。  クベン像(頭)さんは泣き喚く。  カエルム君は暫く迷う素振りを見せていたが、扉の向こう側が騒がしくなったことにより、決心ついたようだ。  カエルム君は大きく振りかぶった。  「ごめんなさい」を付け加えて。  空は青かった。  雲一つなかった。  クベン像(頭)さんはあっという間にそこに吸い込まれ、星となった。 「さぁよぉなぁらぁ~」  彼らはいい笑顔でクベン像(頭)さんを見送ったが、私は悲鳴をあげて消えて行ったクベン像(頭)さんが、流石に可哀想になって笑えなかった。  彼らの動向を見るに、悪魔君達とは決して良好とは言えない関係性だったが、いくらなんでも(約一名を除いて)皆スッキリした顔をするのはどうだろうか。  そんな彼らの行動を見て、ある不安が芽生える。  私、このまま彼らに自分の命を委ねて平気かな。  昨日の虫バラバラ餌攻防といい、今日のクベン像(頭)さんに対する仕打ちといい、助けてもらって言うのもなんだが、彼らがやっていることって結構残酷だと思う。  見た目からして未だ若いと分かっているが、子供故の残酷性と無邪気性を醸し出してる彼らとでは、成人している私にとっては理解出来ない。  だからこそ、彼らの掌に自分の命が懸かっているという今の状況、笑っていられなかった。 「はい、投げた責任を負うのはカエルムねぇ」 「ええ!?」  カエルム君以外の三人が短く笑った。 「何の責任ですか?」  悪魔君の後ろから、男性の低い声が落ちてきた。  水が打ったように静まり返る。 「あ、先……生」  ボソッとフェガロ君が言葉を溢した。  誰も何も言わなくなった部屋の中。フェガロ君、カエルム君、ラージちゃんの視線は私達――つまり悪魔君の後ろの先だ。
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