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私は有らん限りの声で叫んだ。直に着くであろう地面にまだかまだかと恐怖しながら闇の中待ち続けた。
――バサン
長いようで短かった時間が終わったと共に、尻に衝撃が走る。
生きている。助かった。
が、尻が痛い。私の可愛いお尻が二つに割れてしまう。あと何故か右足も痛い。
倒れた体には、冷たい湿気とザラザラとした感触がした。身じろぎすると下からパリッという乾いた音が暗闇に響いた。
これはおそらく木の葉だろう。どうやら落ち葉の上に着地したようだ。
助かったけど、特に右足のジクジクと波打つ痛みは無事とは言えないようだ。目の奥が熱くなってくるがなんとか堪え、周囲を見渡した。
だが相変わらず周りは闇に包まれている。目をじっと凝らしたら、やっと、うっすらぼんやりと黒い縦線がいっぱい見えた。そして虫の音や梟の泣き声が聴こえるので、生き物がいる場所だろうことも分かった。
今度は嗅覚を尖らしてみると、強いシトラスの香りがツンと鼻を通り、早朝の散歩に嗅ぐことができるあの匂いに似ていると思った。
雨が降ったのだろうか。
そうか分かった! 黒い縦線は木々だ! つまり自然の中だ! それなら!
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