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勢いよく顔を上げたら、そこには満天の星屑が敷き詰められていた。
各々好き勝手に煌めく星明に、満月が星より温かい光を主張し、その横に並ぶ赤い三日月が寄り添うように照していた。
見慣れない光景に、痛いとか、ここはどこか、という思考が消えた。
いかんいかん、しっかりしろ私。
ああ、本当に来てしまったみたいだ。無事に……無事に? かどうかはわからないところだけど、生きているから無事だということにして、着いたことには喜ばしい。
が、着きたくなかったという気持ちが押し返した。本当に着いてよかったのか、と。私はなにか大事なことを忘れてないか、不安が押し寄せる。何にせよ、もうあの浮遊感には会いたくない。地面に足が着くのならそれでいいや。
ない胸を撫で下ろして、今だ寝そべったままの体を起こすため腕を地面に着く…―けなかった。おかしいな、何でだろう?
寝そべっていた状態で上半身を上げる時、手を地面に着くはず、それが出来ない。
何故? 腕は痛くない。ちょっと後ろの方にあるけど健全だ。バタバタ動かせるし……バタバタ?
止せばいいのに、慌てて自分の体を確認した。そしてこの時こそ、自分がしてしまった愚かな行動に後悔することはない。
ぎゃああああ! 鳥ーーーー!
「びーーーー! びぴーーー!」
『その日、サンゴ礁の森では一羽の鳥が鳴いておりました。否、泣いておりました』
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