第1章 『犬も歩けば棒に当たる』

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 そのサブローは突然帰っ来た。  だが、様子がおかしい。  何故か犬小屋に閉じ籠っている。  いつもは、俺が出勤の為、玄関を開ける音がしたら、尻尾を振ってこちらを見てくるのに。  例の仕事のミスの穴埋めの為に、さらなるクライアント獲得に忙しくなり、俺の帰宅が遅くなる日が多くなった。  サブローをなかなか散歩に連れていけない。週に1回の休みも緊急出勤で潰れた。  復縁したはずの彼女と連絡を取る暇がなかった。  また、当選した100万円の換金にもいけない。財布の中に入ったままだ。  何より、季節が悪い。  今は3月。  俺は猛烈な花粉症患者である。毎日、憂鬱な日々を過ごしていた。  どうも、休日に自宅から出るのが、億劫なのだ。
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