第1章 『犬も歩けば棒に当たる』

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 ここ数ヶ月、何故かそんなサブローが妙になついて来ていた。  不思議な犬だ。    急に親しく頭をもたげてきたり、舌を垂らして甘えてくるのだが、急に素っ気ない態度を見せる。  人懐っこさと、素っ気無さを交互に見せる。  何なのか、意図は不明だ。  相手は動物なだけにわからない。  そして、復縁したはずの彼女からメールがあった。  『また会いましょう』という一言だった。  何度も見て、読み返しても、彼女の気持ちを理解できない。  その彼女である里奈と最初に別れた原因は、よくわからない。  というより、付き合いきっかけもよくわからない。  一年ほど前、友人の飲み会に来ていた里奈と知り合い、少し話が盛り上がり、数回連絡し、二人っきりで数回会って、交際がスタートした、はずだった。  それが、この不思議な対応。  「復縁しよう」と電話で言ってきたのは、里奈だ。  なのに、何でここまで連絡をくれないのか。  俺からもっと積極的にするべきなのか。  迷っていた。  だが、俺の財布にはまだ“100万円”がある。  彼女と100万円は別だが、俺の気持ちはまだ弾んでいた。  俺は『運が良い』のだ。
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