第1章 『犬も歩けば棒に当たる』

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 久しぶりの休みだった。  俺はサブローの散歩に行こうと、小屋を覗いた。  「おーい!」と声を掛けると、サブローが首をしなだれて出てきた。  いつもの弾むような尻尾振りが無い。『行くのですか?』と言うような仕草だ。 「散歩に行くぞ…」  そう声を掛けると、サブローはようやく尻尾を振った。  現金で不思議な犬だ。  俺はサブローの綱を引いた。  サブローは若干うるさそうに俺の足元に来た。  (うるさいな。分かったよ…)  そんな風な仕草に思えた。  そんな邪険な感じが、どうにも可愛らしい。飼い犬という贔屓目もあろうが、俺はサブローが好きだ。懐いたり、懐かなかったりする気まぐれ加減が可愛らしく感じるのだ。  俺は綱を手に持ち、歩き出した。その後をサブローがついてくる。  さて、今日はどこに行こうか。  自宅から東か、西か、その二択がある。  俺は西にした。  最寄りの駅の駅前に出るコースにした。  サブローは久しぶりの散歩を嬉しがるような感じもしたが、どうも辿々しい感じもあった。  
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