序章

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序章

それはよく晴れた朝だった 昨日終業式を無事に終え今日から夏休みに入った日の朝。 終業式が(無事に)ってのはおかしな言い方かもしれないけれど… 俺の場合はその表現が合っているんじゃないかと思う 小さい頃から変なモノが見えた それは妖怪と呼ばれる者の類。 彼等は至る所に存在していて 大抵は何もせずただその場に立ち何処かを見つめてたりするのだけど 中には良くも悪くも人間と関わりを持とうとする奴等もいて 姿が見えてしまう俺は 昔から彼等の格好の餌食だった 小さい頃は他の皆にも見えると思い込み 恐怖や驚きに叫んだり、逃げ出したりしていて その度に周りを振り回していたんだと思う あの頃の俺は 『嘘つき』 『変わり者』 『頭がオカシイ』 『夏目に近づくな』 学校や家でも周りに気持ち悪がられ疎まれていいるのは感じていた。 早くに両親を亡くし親戚の家に世話になっていたのだが 急に叫んだり、逃げ出したりする俺の言動に嫌気がさした親戚達は次々に押し付け合い 今に至る迄、縁者宅を転々としていた。 そんなある日、 俺の噂を聞いたかなり遠い親戚にあたる藤原夫妻が僕を引き取りたいと申し出たらしく 親戚達は両手を上げて当時高校生になったばかりの俺を藤原家に送り出した。 子供のいない年配の夫妻で 滋さんも塔子さんもとても優しく 厄介者の俺を暖かく迎え入れてくれた。 そこで初めて知ったのが 俺の亡くなった祖母にあたる 夏目レイコの話だった。
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