3/6
前へ
/72ページ
次へ
雷鳴が聞こえる。 不穏な唸りに、ミズキは思わず足を止めた。 雨が降りそうな気配はどこにもない。 頭上に広がる空は抜けるような青空だ。 雷鳴は、遥か遠くに見えるあの雲の中で鳴っているのだろうか。 無意識に服の上からおへそを隠し、ミズキは歩き出した。 明日は月曜日だ。 少しでもそのことを忘れようと散歩に出てきたのに、雷のせいで思い出してしまった。 ゴロゴロという唸りはまるで、明日から五日間の学校生活が、良くないものになると暗示しているようで。 空は晴れているのにミズキの心には雲がかかってくる。  部活は楽しい。 友達も好きだ。 ただ、クラスが苦手だった。 外界から閉ざされた〝学校〟という場所は、その中が全てだ。 箱庭たるこの場所で、ただ〝卒業〟の時を待つ。 運動が好きで、本当に良かった。 小学生の時も、中学生の今も、運動部はいじめられにくい。 ミズキはいじめることもいじめられることもなかったが、どろどろした空気が充満するクラスは苦手で、嫌いだった。 また雷。 さっきよりも近い。 雷は神鳴りとも書くという。 こんな天気の良い日に雷鳴とは、神様の嫌がらせなんだろうか。 空を見上げた。 相変わらず、青い。 ミズキの気分なんて関係なく、どこまでも青い。 そろそろ、帰った方がいいかもしれない。 秋の空は、天気が変わりやすいという。 雷が、三度目の唸りをあげる。 もっと近い、そして、長い。 不安に駆られて走り出そうとした瞬間、ミズキの視界が、真っ白で埋め尽くされた。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加