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年はミズキと同じくらいだろうか。
呼吸もあるが、ぐったりしている。
「大丈夫?」
こういう時は、無理に動かさない方が良いと、授業で習った気がする。
ミズキが声をかけると、男の子はわずかにうめいた。
「み、水を……」
気を失ったのは、はた目にもわかった。
あたりには誰もいない。
自分がやるしかない。
「水って――」
公園なら、水飲み場があるだろう。
でも、どうやって水をここまで運んだらいいのだろう。
ミズキは男の子を眺めた。
この子を水飲み場まで運べるか?
中学生男子にしては小さい方だ。
いけるかもしれない。
引きずることになってしまうが、命に係わることだ。
それくらい何とかなるだろう。
男の子の両脇に手を差し入れた時、奇妙な音が聞こえた。
しゅるしゅるしゅる……。
何かが縮んでいくような、砂がこすれるような音。
注意して見るまでもない。
男の子が、縮んでいた。
思わず身体から手を離す。
頭を落としてしまったが、そんなことはどうでもよかった。
身体が縮み、手足が消える。
肌の色は蒼味を増し、ひれが、えらができていく。
髪の毛が消え、鱗が生える。
変身を遂げた後、一尾の魚が、そこにいた。
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