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ミズキの身体は凍りついたように動かない。 逃げた方がいいのか、だけどこの続きを見ていたい! 男の子は蛇口の下から這い出し、大儀そうに立ち上がった。 丁寧なことに、立ち上がるついでに蛇口まで閉めている。 近すぎもせず、遠すぎもしない適切な距離を保ったまま、男の子はぺこりとお辞儀をした。 「助けていただき、本当にありがとうございました」 「あ……はい」 からからな口で、のどの奥から声を絞り出す。 対して、男の子は緊張もしていなければ、不安も抱いていないように見えた。 自分の背中や頭が濡れていることすら気にしていない。 「私は、サクヒと申します。良ければ、名前を教えてもらえませんか?」 「ミズキ、です」 「ミズキさん。すみませんが、もう少しだけ私に協力していただけませんか?」  サクヒはいったん言葉を切ると、ミズキの返事を待たずに言った。 「どうやら私、いくらか記憶をなくしているようです」
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