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アキにはそんな力もあったのか。どこでもドアのような扉を出現させて場所を移動できたり、治癒能力もあったりとなんとも頼りになる存在だ。もちろん、時歪の時を戻す力も凄いが、アキの力のほうを褒め称えたくなる。きっとそれは時歪の口が悪いせいだろう。
「なんか文句でもあるのか、ド阿呆」
「いや、なにも」
「彰俊、まあ、これも経験だ。まだまだ学ぶことが多いからな。頑張るのだぞ」
「ああ、祖父ちゃん」
目の前にはキョトンとした顔をして、依頼人の彼女が立ち尽くしていた。そりゃそうだ、突然見ず知らずの者にちょっと待ったと声をかけられたんだから。彼女には死神も時歪もアキも栄三郎も見えちゃいない。居るのは自分だけ。
「あ、ごめん。人違いだった」
彰俊は苦笑いをしてそう告げた。死神も手帳を確認して間違いに気づいたようだ。まったく、もっとしっかり任務に取りかかってほしいものだ。
彼女の死はこれで免れた。きっとお礼を言われることもないんだろう。助けたということ自体彼女は認識していないのだから。依頼人だということさえ知らないんだ。仕方がない。
遠くで「サキ、どうしたの?」という声が耳に届いてきた。彼女の名前は『サキ』というらしい。それだけわかっただけでも良しとしよう。
簡単な任務だったにも関わらず、物凄い疲労感が残った。時を戻ることは、尋常じゃない体力を使うようだ。
「さてと、わしは行くとしようかな。また、依頼が来たら来るからな。そうそう、おまえたちのことは、あの世にも伝えておくからな。時守家の管理者交代をな。ちなみにあの世界隈では、『時守相談所』なんて呼ばれているらしいぞ。まあ、普通の人には知られざる相談所であるがな」
果たして、この先どうなるのだろうか。
まあ、こいつらとうまくやっていくしかないか。
アキがまた怖い微笑みを浮かべている。時歪はいつの間にかただの懐中時計に成り代わり自分の胸ポケットに収まっている。
ああ、眠くて仕方がない。
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