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 ようやく、終わりかけてたんだ。このまま弱体化していけばなんとかなるなんて保証はどこにもないけれど、戻ったらどうにもならないことどけは分かる。  怖い。そう、怖いのだ。あの、ぼくを見る村人の目が、おぞましい。誰にも受け入れてもらえないことが、恐ろしい。 「……力尽くにでも連れて行けばいいのに、そうやって悩んでくれる。私、ジークさんの素敵なところ、たくさん知ってるんです。言い切れないくらい。私も一杯お手伝いします。私の……」 「…………」 「…………」 「……どうしたの?」 「いえ、その……私の――私のっ! 好きな人が、みんなに受け入れてもらえるように、頑張りますっ!」 「……は? え? 今、なんて?」 「……ダメです。一回限りです」  空耳だろうか。好きとかなんとか聞こえた気がしたんだけど。 「気のせいかな」 「気のせいじゃないですよ! もう……ジークさんが、どうなっても、私はジークさんを愛してますって言ってるんですっ!」 「……だ、騙そうとしたって、そうはいかないよ」 「嘘じゃありません。本当です。……これじゃ、足りませんか?」  足りるとか、足りないとか、そういう問題じゃないだろ。なんだよこれ。 「……こんなの、反則、だろ」 「私を連れて行ってくれますか?」  濡れた瞳で見つめてくるイレーネにぼくは頭を振る。 「それはダメだ」 「え……」 「きみは逃げろ。ぼく一人で行く」 「そんなっ!」 「治療は後でも出来るだろ。戦闘中に周りをうろつかれたら迷惑だ」 「でも、その間にも助けられる命があるかも――」 「いい加減にしてくれっ!」  気付けば怒鳴っていた。悪いとは思うけれど、ここで退くわけにはいかない。 「ぼくはきみに死んで欲しくない。きみには危険なところに行かないで欲しい。……村人は救う、ドラゴンは倒す。それで満足だろ?」 「どうして、そこまで頑なに……。他の町や村に行けば、薬剤師くらいいるじゃないですか」 「……誰かを好きになるのは、きみだけの特権じゃないってことだよ」 「それ、は……」  その言葉の意味に気づいたのか、イレーネは頬を赤らめて俯いてしまう。 「照れている時間はないよ」 「は、はい、そうですね。では……どうぞ」  目を瞑ったイレーネの肩を抑え、ぼくは彼女の首筋に歯を突き立てた。
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