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        × × × ×  力が戻ってくるのが分かる。  ぼくの化物としての部分が人間としての部分を片隅に追いやるまでそう時間はかからなかった。 「また、これで最初からか……」  まあ、何年ぶりに吸った血をおいしいと思ってしまった時点で、そもそも人間に近づけていたのかどうか怪しいところではあるのだが。 「さて、行くか」 「……ありがとうございます」 「まあいいさ。正確には、最初からじゃ、ないわけだしね?」 「っ! はいっ」  イレーネの笑みに送り出される形で、ぼくは村へ向けて駈け出す。  強化された、というか、全快した視力と身体能力で林立する木々を避け、瞬く間に村へと辿り着く。ドラゴンが村の奥――ぼくがいる位置とは反対側――にいるのが目に映った。  ドラゴンの目の前には逃げ遅れたらしい子どもが一人、おそらく親だろう、それに駆け寄る女性と男性が一人ずつ。……間に合うな。  地面が陥没するほどの力で一気にドラゴンの目の前まで移動し、大口を開けたドラゴンの顎を軽く蹴り上げた。怯んで後退したドラゴンに向けて言い放つ。 「――かかって来いよ、大蜥蜴」  咆哮をあげて突進してくるドラゴンをギリギリで避け、横から全力で顔面を殴り飛ばす――それだけで決着はついた。  ドラゴンの頭は爆発でもしたかのように肉塊となって散り、頭部を失った身体が地に伏せる。 「……化物だよなぁ、やっぱり」  母親が人間で父親が吸血鬼――ハーフヴァンパイア。  ドラゴンと戦うなんてこと自体が早々ないから、まさかここまで簡単に死ぬとは思わなかったが、まあ、結果オーライというやつだ。 「……帰るか」  恐れ百倍増しだな。ユリアに怒られるかもしれないのが、なにより嫌だ。  しかし、やってしまったものは仕方がない。踵を返し、村の出口へと歩いて行くと、途中で後ろから声をかけられた。 「あっ、あのっ!」 「ん?」  振り向くと、そこにいたのはさっき襲われていた家族だった。三人は揃って頭を下げる。 「ありがとうございましたっ!」  ……結果オーライか。中々、悪くない。         × × × × 「本当にありがとうございました」 「いいよ、もう。何回言えば気が済むんだ」
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