思い違い

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目の前に立っているのは、私が前に見た、いかにも特進科であろう男子生徒。 「あそこで本読んでたんだけどさ、過呼吸でも起こしちゃいそうな声が聞こえてきて」 まずい、まずい、まずいよねこれって… 体全体から、一気に血の気が引いてくのがわかる。 どうしよう、まさか瑛心に打ち明ける前に、他の人にバレちゃうなんて。 「ああそうだ、はい、これ」 私の前に突き出してきたのは、さっき私が見つけた恋愛のススメ。 ほら、やっぱりやばいよこの状況。 「あんまりきゃーきゃー言わない方がいいよ?ここ、図書室だし」 こういう弱みを握られた時って、大抵…… 「まあ、俺は忠告しにきただけだから、これで」 私の頭を軽く叩いて、戻ろうとするその人の服を、私は思いきり掴んだ。 「……する気?」 「え?」 目を見開いて、振り返るその人を指さして、私は大きく息を吸った。 「あんた、私の弱みを握って、一体なにする気……っ」 「あーーーだから、ちょっとボリューム落としてよ。陽奈子ちゃん」 勢いよく放った言葉は、その人の手で、虚しくも途中でシャットアウトされた。
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