どうしようか

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「おはよ、ひな」 担任がホームルームを始めてもなお、ざわつく教室の中。 前の席から、微笑み挨拶してくれたのは、同じ音楽科の、中谷一知花(ナカタニイチカ)。 成績優秀で、すごく頼りがいのある女の子。 長い黒髪はひとつに束ねられていて……どこからどう見ても、美少女。 「私と仲良くしてくれて、ありがとうね…」 「何、そんなに改まって」 一知花とは、1年の入学式でまだお互いの学科が何かもわからない時に、仲良くなった。 まあ、元々私は芸術科だった訳なんだけど… 「今日も一緒に来た?例の王子様と」 「うん!もう、毎日幸せです」 例の王子様っていうのは、もちろん瑛心のこと。 緩んだ頬を両手で抑えるけど、考えただけでにやにやが止まらない。 「学科変わっちゃったからね、 登下校しか話せなさそう」 一知花は、私の前の席で足を組んで考え込むような体勢に入った。 まあ、学科が変わったのは仕方のないことなんだけど…… って、よくない!私は未だに納得いってない! 入学して初めの授業、私は芸術科の先生に「お前は音楽科が向いている」と言われたのだ。 どこをどう見て、しかも入学したてだっていうのに、なんてことを言うんだこの先生! そう思ったけど、その先生が学校でなかなか権力を持った人だったのが、運の月。 有無を言わさず、すぐに音楽科へと移らされた。 おかげで、一知花と再会することもできたけど…… 「せっっっかく、瑛心と一緒の高校にしたのに」 これじゃあ、なんの意味も… 「あれ、ない」 一人で頭を抱えていると、一知花がカバンを見つめながら、ぽそりと呟いた。 「入れたはずなんだけどな、数学の教科書」 「え、よりによって数学とか、やばいじゃん! 誰かに借りなきゃ……」 あ!そうだ、そうだよ!! 私は思い立って、一知花の手を両手で掴んだ。 「ねえ、ちょっと芸術科にいかない?」
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