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「また都田鑑賞会でもするつもり?」
「まあ、するっちゃするけど……今回は別の目的!」
廊下を小走りしながら、私はひとつ上の階にある芸術科の教室へと向かっていた。
そうだよ、学校内でも絡める機会なんて、考えれば無限大……はちょっと言いすぎたけど、
それでも、今回一知花が教科書を忘れてくれたおかげで…
「瑛心ーっ」
「うわ、びっくりした…」
丁度、教室の入口付近に立っていたみたいで、瑛心は目を見開いて少し後ずさった。
「数学の教科書、貸して?」
「……ん?いいけど」
拝むように両手を合わせると、瑛心は気の抜けたような顔で頷いた。
「にしても、考えたね」
瑛心が教科書を取りに行ってすぐ、一知花が私の肩に手を置いた。
その顔は、見なくてもだいたい想像がつく。
「でしょっ…て言いたいとこだけど
実際やばいでしょ!数学忘れは…」
「んーまあ、確かにね」
数学の先生は、とんでもない気分屋さん。
忘れ物をすると、そのペナルティとして、教室の掃除等を任せられるのだ。
気分屋さんということもあり、ペナルティの内容は日によって変わるけど。
そんなの、なんのスリルも感じない!!
「はい、どうぞ?」
「ありがとね、都田」
「え!あ、まじ…」
貸すのが私じゃないと知った途端、焦り出す瑛心。
手を伸ばす一知花に、少し恥ずかしそうに教科書を渡していた。
もう、ほんとに可愛い……♪
「そろそろ、一知花にも慣れてよ?」
女子と話すのが恥ずかしい瑛心と唯一話すことができる人間……
そう、それが私!
特別な感じがして、なんかいいよね♪
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