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確かに気を失っている警備員さんを通行人が見つけ、不審がり、工事現場を覗くことが考えられる。 そしてそこで、暴れてるだろう人がいたら、迷いなく通報するだろう。 幸い今はまだ、私たちを不審がるような通行人はいない。でも、時間の問題だ。 「必要ねぇよ」 「そうか?邪魔されたくないだろ」 「桐生さんが来るのは逆に好都合だ。公園に行く前なら戻って来なくて済む。それに」 言葉を切った刹那、ぞっと背筋どころか全身に、悪寒が走った。 竜さんの表情、態度、雰囲気が尋常じゃない。怒り、嘆き、敵意──。 幾つもの感情、心情が複雑に絡み、露出している。ただ近くにいるだけで、恐怖する。 「すぐ終わる」 複雑な感情があるはずなのに、冷淡だった。それが極限にまで達した感情を抑え込むためだと、遅れて理解した。 たった数秒の間で、私の思考能力は著しく低下していた。竜さんに対して、恐怖の感情しかないのは失礼だけど、それ以外出てこない。 萎縮している。そう気づいても、どうにもならない。だから、左腕を引っ張られ、腰に腕を回されても、呆然だった。 「未来、俺の側を離れるなよ。いいな?」 「……は、はい」 ただ、それだけを口にした。それだけしか、口にできなかった。 恥ずかしさよりも、これから起こることへの恐怖の方が勝っていた。ギュッと所長さんにしがみつく。 拒むことなく受け入れてくれた所長さんと顔を合わせ、竜さんがうなずいた。
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