雑用探偵(仮)と五十嵐所長

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だから私は、高校を卒業と同時に上京した。 人生初、東京の地に降り立った私がまずしたことは家探しだ。住む家がないとどうにもならない。 二日間、安いホテルに泊まって、三日目に私の、私だけが住む家が決まった。 築ウン十年の、鉄筋コンクリートのアパートの角部屋。1Kで、家賃は四万円台。 セキュリティと呼べるものは一切備わっていないので、大家さんから、 「女性の一人暮らしなら、郵便受けに名前は書かないこと、洗濯物は出来る限り室内で干すこと、カーテンを一目で女性の部屋だと思われないような色合いにすること。何かあっても、自己責任でね」 と恐ろしい注意を受けたので、私はそれを忠実に守っている。 家が決まったら、次は働き口だ。私は特に、手に職を持ってなかったので、もっぱらバイト三昧だ。 週五、週六、掛け持ちまでして、働いた。けれど、どれも長続きしなかった。 働いた場所は、両手の指を合わせても足りない。面接を受けた回数なら、更に両足の指を足しても足らないほどだ。 そして、現在に至る。 肩を落として、うつむきがちに歩いていた私の目に、この「人員募集」の貼り紙が目に飛び込んできたのだ。 私の仕事探しは基本、求人雑誌だ。だけどこれは、求人雑誌を捲っていただけなら、存在すら知らずにいたであろう仕事だ。
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