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──でもそれは、公園から運ぶ時だけだ。公衆トイレから公園に、という問題がまだ残っている。 「公衆トイレからの、瞬間移動じみたトリックはどうしたんですか?」 「それも簡単だ」 所長さんが鮮やかに解き明かしていく。 「麻袋を使ったんだ」 「麻袋?」 確かに、工事現場だからたいりょうにあるだろう。でも私の認識が正しければ、大人の男性を入れられるほど大きくはないはず。 「一枚や二枚どころじゃないぞ。何枚も使うんだ。足から被せて、頭から被せて、外見からでは中身が見えねぇように」 「それに、何枚も使い、傷口を上にしたら、血も滴り落ちねぇだろうな」 「なるほど」 だから通路には血が落ちず、拭かなかったんだ。 「麻袋を使った理由はまだあるぞ。未来、作業服を着た男どもが麻袋を運んでたらどう思う?」 「何かの作業としか──あっ!」 子供たちに目撃されたから、その後に咄嗟に取った目撃対策。作業服を着て麻袋を運ぶ作業員。近くには工事現場。 解体前はショッピングモールだったから、近所の人たちには周知の事実。 その姿を目撃したとしても、『お仕事頑張ってるんだな』で終わってしまう、記憶にも残らない行動。 たとえ聞き込みをしていたとしても、その情報は誰の口からも出てこなかっただろう。
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