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「探偵のみなさん。ここはどうでしょう。お金で手を打つというのは」
「金?」
「えぇ、いくらでも用意しますよ。百?二百?確かなのは、依頼人よりも多く支払いできるということです。それで全てなかったことに、というのは?」
「……」
私には、竜さんの背中しか見えない。だから、どんな表情をしてるのかわからない。
わかるのは、肩が大きく上下していることだけ。それは。
「できるわけねぇだろ!」
怒り。それ以外の感情が、ない。
「人を殺しといて、ガキを半殺しにして許されるとでも微塵でも思ってたのか?」
「あいつは、あいつが悪いんですよ。持ち逃げしようしたから罰を与えただけ。それの何が悪い?」
「てめぇらのルールなんて知るか」
「規則ではなくて鉄則だ。君らのところにはないのか、そういうの」
「答える義務がねぇ」
「興味があるんだから教えてくれたっていいじゃないか」
「……」
「平然としているねぇ。じゃあちょっと挑発してみようかな」
微笑が、冷笑に変わった。
「ガキどもを半殺しにするつもりなんかなかったんだよ。半殺しじゃなくて、殺すつもりだったんだよ?」
その言葉を耳にした瞬間、その人に対する恐怖が消えた。ギリッ、ギリッ、と嫌な音が響く。
それは私の歯軋りの音だと、遅れて気づいた。
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