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「登校中に突っ込めば単なる事故として処理されるはずだったのにあの野郎、クスリは使うわ一人も始末してねぇわでとんと使えねぇ。重体は一人だけらしいな。さっさと死んでくれねぇかな」
「てめぇ!?」
「──ふざけるなっ!」
気づくと、私は叫んでいた。所長さんの背中から離れて、その人を直視して。
腰に回されていた腕が、竜さんの動向を注視し、緩んでいたのが幸いした。
制止の言葉が聞こえる、ような気がする。耳を素通りしていた。睨む。
その人の視線も、作業服の男性たちの視線も私に集まるが、気にならない。
恐怖よりも、堰を切ったように押し寄せる怒り、敵意を制御できない。
「自分たちの罪は棚に上げて、なんでそんなことが言えるの!?全部、悪いのはあなたたちでしょ!」
「威勢のいいお嬢さんだ。お礼に一つ教えてあげよう。ガキどもは、運が悪かっただけだ。俺があいつを殺してる時にトイレなんかに来てしまったんだからな」
「一つ聞かせろ。なぜお前は公衆トイレなんかで殺した」
「答える義務はない──と言いたいところだけど、理由なんかないんだよ。あの日あの時、公園であいつを見つけたから、殺っただけ。あいつも悪いよな。もっと遠くに逃げてればよかったものを、近くでうじうじ。なぁ、お嬢さん。あいつはなんで、あんなところにいたと思う?」
「そんなの、知るわけない!」
「俺的には、人質でも取られてたんじゃねぇかと思うわけよ。たとえば、妹とか」
「取ってたのか」
「さぁな、知らねぇよ。今、風俗で働いているあの子がそうだっけ?」
その人だけが、首だけを後ろに向け、確認を取る。作業服の男性たちはニヤニヤと、いやらしい、憎悪を感じる笑みで応じていた。
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