僕と僕

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 ――どうして僕はここにいるのだろう?  学校からの帰り道。クソ寒いだけの夕暮れ。『冬』という季節。二丁目から三丁目に差しかかる住宅地。  僕は何でもない家の前をぼんやり歩いていた。 「ねぇ、キミ。ちょっと来てよ」  ギギーッと重い門が開く音が聞こえると誰かが僕を呼んだ。  あんまり寒いから北風のあまり通らない細い路地を選んで歩いていた。時々、犬の散歩をするのに通る路地。高い塀で囲まれた路地。電信柱の上から僕を見下ろす街灯。家々の二階からもれる明かり。  誰かに呼ばれて僕は首を傾げた。  ここは、ずっと空き家だった気がする。
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