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「ねぇ、キミ。早く来てよ」
やっぱり、そう呼んでいる。
「やだなぁ。僕を忘れたの?キミに僕の大切なモノを貸してあげたのに」
僕が知る限り、しばらく開くことはなかった。そんな家の門がギギーッと音をたてる。
夕暮れの街灯は僕を呼んだ人物の顔を映し出すほどの強い光を放っていない。そのせいか、門の向こう側に人がいるのは分かってもそれがどんな人物なのかさっぱり分からないでいる。
「嫌だなぁ。キミは僕の顔まで忘れたの?」
僕を呼んだ人物はにゅうっと門から外に出て僕を見つめた。
その頃には夕暮れはますます闇色に近付き、路地を薄く照らしていた街灯の明かりはほんの少しだけ強く路地を照らす。
僕は僕を呼んだ人物の顔を見て背筋が凍った。
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