僕と僕

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 あの日もこんな夕暮れだった。塾の帰り。この路地を一人で歩くのがやたらと寂しくて悲しくて情けなくて……。  僕は何でもない家の門の前で今日と同じように僕と出会った。今と違うのは僕たちが小学生だったこと。 「選ぶの一つ。一つめは時間を巻き戻す力。二つめは人の心が読める力。三つめは他人を操れる力。ねぇ、キミならどれがいい?」  小学生の僕は何の疑問ももたずにどれがいいかと考えた。  時間を戻してみても小学生の僕には何の意味もない気がした。もっと小さな頃に戻ってみても興味はない。それどころかもう一度惨めで嫌な思いも繰り返すようで、どうしても選びたくなかった。  だから僕は残りの二つのどちらがいいかと考えた。
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