第5章

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「どうしましょう」  宮内が声を掛けてきた。  下嶋は思考をフル回転させた。  谷城は武本に最終ラインを3人で組めと言った。  しかし、それはあまりにリスクが大きすぎた。大阪のスリートップを3人で見なければならないのだ。  であるならば、石川を最終ラインに下げるとともに、自分もひとつポジションを下げた4・4・1にするのが妥当だった。  ワントップであっても時貞なら十分にやれる。  下嶋は監督の意図を確認すべくベンチの方を見た。  バックスタンドに近い位置からはかなり遠くなる。  オルチャクはコーチングエリアぎりぎりのところに立っていた。  右手を掲げ3本指を立てている。  スリーバック――。  それが監督の指示だった。全員がそれを理解した。 「最終ラインの前はおれが見ます」  石川が力強く切り出した。  いいものを持っているが気が弱い。  ユースから上がってきたばかりの石川はそう言われていた。  このシーズン、遠征時は常に石川と時貞は同室だった。ある意味で、時貞と一番長く時間を過ごしている。  ふたりの関係がいまはどうなっているか詳しくは知らない。  それでも、10ヵ月前のひ弱な印象は、いまはもうなかった。 「おれと青木が宮内をフォローします」  山井が言うと、青木がうなずいた。  石川が最終ラインの前に磔にされるであろうことを考えれば、両サイドの山井と青木にはこれまで以上の運動量が要求される。 「だから裕二さんはそのまま颯人とトップにいてください」  彼らのすべての覚悟を飲み込み、下嶋は首を縦に振った。
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