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左サイドで山井の足がもつれた。
いったん中でボールを受けた沖田は、石川を外すと再び左サイドに送ってきた。
玉利が釣り出される。2対1の状況をつくられた。
玉利が外された。
エンドラインぎりぎりのところで右ウイングがフリーでボールを持った。
その眼前を影が通過した。
時貞だった。
危機をいち早く察知し、最前線から最後尾まできていた。
スライディングした足に当たったボールがスタンドに吸い込まれていく。
玉利と時貞がどちらからともなく抱き合った。
相手の体をへし折ってしまいそうなほど強く、そしてふたりともなにかを叫んでいる。
残り時間は2分を切っていた。
「裕二さん」
駆け寄ってきた時貞が荒い息遣いのまま言った。
続けた言葉に下嶋はうなずいた。
大声を出して玉利を振り向かせ、手振りで指示を送る。玉利も理解したようだ。
大阪のコーナーキックを那珂川がパンチングでクリアした。
それを宮内が収める。
寄ってきた青木にはたいた。
「ゴーッ!」
下嶋の合図とともに左サイドから玉利が走り出した。
強引に上体を傾けて前への推進力をつくっている。
千葉が最終ラインを押し上げた。
フォーバックになっていた。
左から下嶋、武本、仲藤、そして時貞。
中盤の4人は変わらず。
トップの位置には玉利が入る。
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