プロサッカー小説「フットボールソウル」 プロローグ

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 ワールドカップ優勝――。  夢物語が、おぼろげながらも現実という輪郭を帯び始めていた。  準決勝の相手は、サッカー王国、ブラジルだった。  ワールドカップ最多優勝を誇る彼らは、長い低迷期を経て、この舞台に舞い戻ってきていた。  ブラジルは、美しく、そして強かった。  完敗だった。スコアは0対2だったが、実際にはそれ以上の差があった。  2ゴールに絡んだブラジルの選手が、試合後のインタビューで言った。 「僕らにあって、彼らになかったものがあった。それだけだよ」  5日後、ブラジルはワールドカップをその頭上に掲げた。  日本は、自分たちという存在が、優勝したブラジルの添え花でしかなかったことを思い知らされた。
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