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鳥と果実
近所の家の庭には、実の成る木が何本も植えられている。
柿、夏みかん、かりん、金柑…何種類もの木が並び、季節にはとりどりの実をつける。
そうなると、どうしても鳥の害が出るようになるらしく、家の人は実りの時期になるとあれこれ対策を講じていた。
ネットを張ったり個別に袋をかけたりと、こまめに対策をしているようだけれど、鳥の方にも知恵があり、うまいこと実をついばんでいく。
その家の側を通り、もうそろそろ熟れたかな…と思った翌日、皮だけが枝から垂れ下がっている光景を、いったい何度見たことか。
でも、今年に入ってから、何故か鳥害はなくなったようだ。
ネットも袋も使わない。追い払う姿も見かけない。
鳥が嫌がる周波数の音でも流しているのかと思ったけれど、そういう物が開発されたという話を聞いたことはないし、そもそも、鳥自体はその家の木々に群がっているのだ。
チーチーちゅんちゅん。あんなに鳥が来ているのに、どうして果実は無事なんだろう。
その疑問の答えを、今日、目撃した。
通りかかった家の側。熟れ頃の柿を狙い、一羽の小鳥が側へ寄る、その瞬間、柿が縦真っ二つにパカリと割れた。
割れた柿が両側から鳥を挟み、閉じ込める。
取りに鳴き声さえ上げさせない、僅か一瞬の出来事。俺はその様をただぽかんと見つめていた。
そして今日。
家に帰ったら台所のテーブルに数個の柿が置かれていた。聞けば、あの家からお裾分けで頂いたのだという。
「今年は鳥の害がなくて豊作だって、あそこの奥さん、嬉しそうだったわ」
確かに、鳥による害はなくなったのだろう。鳥の方は被害甚大みたいだけれど。
茜色に熟れた大きな柿。何も知らなければおいしそうだなと思う柿。でも今は…『これ、食って大丈夫か?』と、心からそう思う。
鳥と果実…完
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