二章「妖怪の女王様」

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鈴の音が廊下を響かせる。 座敷童子と共に廊下を歩く人が現れた。 貞子姉さんはその人にお辞儀をする。 人ではなく、猫か? 童子は親指を貞子に差してから手のひらを下に押さえるようなジェスチャーを私に送る。つまり「彼女の真似をしろ!!」という意味らしい。 「ふむ。君が風夜君かい?」 「左様でございます」 「貴様になど聞いておらんわ!!」 そう言った途端、貞子が吹き飛ばされリビングの壁に強打する。 「おい、姉ちゃんに何をした?」 私がそう言うと急に体が熱くなった。 「風夜、いいのよ。私が悪かっただけだから」 「ほう。これで確証できた。ごめん」 「えっ……妖怪の女王である猫又様が謝った?っていうか、さっきの黒い闇は何?」 「説明するか。童子、お茶を用意しろ」 彼女は椅子に座る。同じように私と貞子も座った。 「そう睨まないでくれ。彼女にも承知の上でやったんだから」 「風夜?私からも許してあげて欲しいな?」 私は睨むのをやめた。それにしても女王って何だ? 童子はお茶をコップに注いで私たちに出す。なぜか、私に出す時の手が非常に揺れていたが。そして彼女も椅子に座る。 「風夜君。君は何者か、分かるかな?」 「童子と貞子姉ちゃんの家族です」 「ほう?母さんや父さんは?」 「えっと……」 そういえば二人から聞かされていない。 「君の父さんや母さんは彼女たちとは違うの。二人も血は繋がってない姉妹なの。捨て子としてあなたを拾った幽霊でしかないの。妖怪とも人間だったら言うわね。あなたは神の子よ?」 「神の子?」 「えぇ……史上最高地位にいる神ゼウスとヘラの隠し子よ」 「嘘だ!!」 「えぇ……ある意味半分は嘘。まぁ、何を基準として半分は別だけど。あなたは紛れもなく人間。でもあなたの中に神がいるの。器を移し替えしてる神がね。その名はゼラ。漢字で書くと絶える螺線。地獄と天国に行く道を決めるゼウスの代理の神とも言えるわ。そして人間たちに千年前に一度封印された。だが、今はそれ以前同様に生き神として扱われているみたいな?他にも色々あるけど」 「急にそんなこと言われても……」 「そうですよ?口答えするといけないですが、急にそんなこと言うなんて……」と貞子は言う。 「ならばさっきの闇とこれを見て同じこと言える?」 闇ってなんだ? そう思いつつ彼女が付けたテレビ画面を見る。 そしてさり気なく「殺したい」と言った。
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