第18話 宿り木の鶫

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「こういう場合、ここの比率を見たらわかるはずだ。明らかにこの支店だけ斗出している」 紘斗は姫良が持っている手書きの資料を見ると、ため息をつきながら大阪支店の数字をとんとんと突いた。 「ここだ。担当者の悪い癖だな。先頭の数字は“7”じゃなくて“1”だ」 姫良はまじまじと資料に見入った。 この書類を書いた人は“7”の最初の縦棒を書かない人らしいとまでは察していたけれど、その中に“1”が混入しているとまでは疑わなかった。 「そっか。ありがとう、ひ……ございます、吉川主任」 気が抜けたのと同時に緊張も緩んだようで、また失敗を犯しそうになり、姫良はすんでのところで我に返った。 紘斗は口を歪めて首をひねり、それから姫良が使っているパソコンを指差した。
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