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「“meeting”っていうフォルダの中に二十二日付けのファイルが入ってる。全部プリントアウトして持ってきて」
「はい」
姫良はすぐにファイルを探し当て、十枚の会議用資料を出力にかけた。
「いいよね」
姫良に身を寄せ、こっそりと話しかけてきたのは同じアルバイトの女性だ。
派遣会社は貴刀の経験者を送ってくるのが通例らしく、姫良より二才上のこの女性、穴井麻知はゴールデンウィークのときも一緒だった。
姫良が顔を向けて首をかしげると、穴井はちらりと姫良の背後に目を走らせた。
「吉川主任よ。まえもついたのは吉川主任だったよね?」
「あ……はい、そうですね」
「みんな、うらやましがってるよ。近づきにくい感じあるけど、有望株だし。遠野さんてどこの派遣?」
「え?」
姫良は『有望株』という言葉に気を取られ、意味がぴんとこなくて訊き返した。
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