隣が痴話げんか

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顔を覗き込んできた慎吾に、真白はゆるく首を振った。 「なんつうか、昔から俺が外でぼーっとしてると、おまえが迎えにくる」 親に怒られたときとか。なんとなく外でだらだらとしていて、家に帰りたくなくなった時だとか。 そんなとき、いつも「ほら帰るよ」と手を差しのばしてくれるのは、この幼馴染みだった。 昔から変わらない。変わらないんなら、まぁいいかと思う。 褒めたつもりだったのだが、慎吾は微妙に苦い顔をした。 「いや、べつに、誰の面倒でも看てるわけじゃないよ、俺」 「へぇ」とだけ真白は応えた。 それ以上会話を続けたところで、慎吾はその理由は言わない。 なんとなくそれが分かってしまうのも、なんだかんだと20年近くずっと一緒にいるからなのだろうか。 なのに訳分かんねぇなと真白は思った。 こいつは幼馴染みと言うだけで、俺の面倒を看ているのか。 そしていつまで看続けるつもりなのか。 かなみのことを好きなんじゃないかと思ったけれども、じゃあなんで男と寝るのか。 「訳分かんねぇな、おまえ」 うっかり零れ落ちたそれに、慎吾は理不尽極まりないと言う顔で、 「俺はおまえが訳分かんない」 と言った。
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