「白雪姫の王子様はね…?」

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私は愛も恋もわからない。 愛というのは…人の全てが欲しくなるということ?誰かに自分の全てをあげたくなるということ? そんな感情をはたして自分が抱くことがあるのだろうか? 自分は人として欠陥品のように、心が壊れてしまっている。 綺麗なものを見ても綺麗と思えないし、悲しい話を聞いても悲しいと思えない。 だから誰かに恋をすること、誰かを愛することなんてきっと出来ない気がする。出来なくてもいい。 くだらない、つまらない、もろい結びつきならばいらない。 でも、この脱げ出すことのない絶望から助けてくれるような人間がもしもこの世界にいるのならば、男だろうが女だろうがその手をとってどこまでもついていきたいと思っていた。 それがルイさんだったのだ。                             * 歩道橋で、ぼんやりと下を流れる車の群れ、そして冷酷なアスファルトの隅に横たわる引かれた猫の死骸を眺めていると、 「ひとり?高校生?」 いきなり声を掛けられた。 またか、と思った。 制服姿で一人で街を歩くっていう事は蜜になることだから。繁華街に浮遊するいやらしい昆虫たちの。 奥歯で軽蔑を噛みしめて、一瞥もせずに、 「援助交際ならよそを当たってください」 冷たく言い放つが、この男は諦めが悪い性質なのか、それとも女子高生の果実みたいな肉体がそんなに欲しいのか、体を曲げて無理矢理私の視界へと入ってきた。 彫刻みたいな男だった。整った顔立ちなのに、どこか感情・生が抜け落ちている。作りもののような…。 一瞬見惚れそうになった自分を「バカ」と心の中で叱りつけて、彼とは反対方向を向いて、拒絶した。 「援助交際なんかじゃないよ」 「じゃあ何ですか。道でも聞くんですか」 「確かに道は分からない。東京って電車の乗り換え一つでくたびれるし、人間が波のようで目的地を見失うよ」 「駅なら歩道橋を降りて左に真っすぐですよ」 「ありがとう。ついでにもう一つ僕のお願いを聞いてくれないかな」 「さっきも言ったけれど私 そんな馬鹿じゃないから。若い肌と膣が恋しいならもっと頭の悪そうな、貪欲そうな娘に声掛けてよ」 「いや。そういう邪なことをお願いしてるんじゃないよ」 「じゃあ何を…」 「お墓、作らない?」 「え?」
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