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愛している、愛している。
ルイさんが私の全てとなった、ルイさんが私の世界になった。
私は気怠い体に幸福感を感じ、体に散った赤い花びらに愛を感じ、そしてルイさんを欲しながら生きるようになった。それはルイさんも同じだった。彼は私をいつだって貪るように愛した。
*
あのテレビ番組を見終わると再び年上の恋人に電話を掛けた。
今度はワンコールで「はい」という低い声が鼓膜を震わせた。
「あのね、ルイさん。私今すぐ会いたいんだけれど」
「うん、そんな気がしてたよ」
「どこにいるの?教えて、私行くから」
「駅前のビジネスホテルルークの809号室。僕も君に逢いたいんだ」
キャミソールの上にカーディガンを羽織っただけの無防備な恰好で飛び出した。
どこかで啼く、犬の声が耳に刺さって痛い。
ルイさんはどこに住んでいるか分からない。ホテルを住処に転々としていると言っていた。
ルイさんは外で会うことを嫌った。
私も同じ学校の奴らに会ったら面倒だからとそれに同意して、いつも会うのはルイさんの住処であるホテルか、個室の飲食店だった。
あれは…もしかしたら人に顔を見られない為じゃないか。
ルイさんが殺人犯だったら。
それも女性を、当時の妻を次々に殺していたら。
嫌悪感でもあり、嫉妬のどす黒い感情がこみ上げてくる、もう吐きそうだ。
指定された場所に向かうべく、足がアスファルトを蹴る中で堂園類容疑者に殺害されたとテレビで紹介された女性の顔が過った。
茶色の巻き髪に派手な化粧、手入れされていない肌にぼさぼさの髪、
統一性の無い女たち。今はもうこの世にいない女たち。
「ルイさん」
ホテルのフロントに取り付いでもらい、部屋に入ると、
「ああ、こんばんは。ささめ」
いつも通りのルイさんの穏やかな顔があった。
「紅茶を入れるよ。さあ、お座り」
促される通りにソファに腰掛ける。大好きなアールグレイのセカンドフラッシュ、水色の香り。
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