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[色の小話]
*遠くから蛍介君を眺めてみる
私はヒーローになりたかった。遠くにある、振り返る事すら出来ない思い出、一番古い記憶。どうしてなりたかったのかは、思い出せない。でも、私はヒーローになりたかった。それだけは確かだった。
ミヤコウタ町の家々にポツポツと明かりが灯り始める。日が暮れる。真っ暗な夜が、来る。私は夜が好きだ。闇夜は視界を奪う。それが心地好いから、好きだ。
屋根から屋根を跳ぶ。風が髪を揺らした。
「……あ、」
賑やかな音に、声を漏らす。見下ろせば、人が歩いていた。皆同じ様な服。学校の帰りなのだろう。楽しそうだなと、思って少しだけ唇を噛んだ。微かに潮騒の音が、響く。
誰もかれも、笑顔だった。その中でも、一際目についたのが金色の髪をした男の子。お日様みたいで、その笑みは昔になりたかったヒーローに似ている様な気がした。
そうして見ていたせいか、男の子が視線を上げる。赤にも、紫にも似た瞳が瞬いて、彼は笑った。
「……!!」
吃驚した、本当に吃驚した。心臓がはね上がる。私に笑った訳では無い、と思うのに。それでも、彼の笑顔は心に焼き付いて。気がつけば、私は逃げ出してしまっていた。
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琴岡さん宅、稲城 蛍介君をお借りしました。
蛍介君ーッッッ!!貴方の弾ける笑顔は!!正に!!HEROです!!ありがとうございます!
色は逃げました、喋りもしてないです。目しか合ってないです。ただ私が蛍介君の笑顔が見たかっただけです。申し訳ありませんんんん!!
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