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笹木がキッチンに向かいながら聞いてくるのに対して、怜は軽くうなずく。
「オレンジ。あとはお前の好きなものでいい」
ゾッとするほど妖艶な美貌の青年の言葉に笹木は頷きながら、アイランドキッチンに食材の袋を置いた。
笹木をキッチンに残し、怜は自分の寝室に向かった。デスクとベッドの置かれた寝室は全面のガラス張りで、圧巻の夜景が部屋を照らしていた。
自動で照明がつく中、辺りを見回す。そして、重厚なマホガニー製デスクの、上から二番目の引き出しをあけた。そして、そこに置いてあるルガーLCPを見てこれが目的だと確信する。
怜が置いていた時と寸分変わらずそこに置かれているが、青年は誰かが触ったことを直感的に感じていた。そっと銃を取り出し、匂いを確認してから中の銃弾を確認した。6発+1。使った形跡はない。
だが、製造番号を見に来たのならば、怜はとんでもない穴をフレデリックに見せたことになると、重いため息をついた。
ロンドンのペンハウスが襲撃を受けた際、ルガーLCPをフレコに渡している。あの場で渡さなければ、変な勘繰りを生んでいただろうが未登録であることが解ったフレデリックは、全ての怜の住居に入り込んで家探しをしたのだろう。
あの男のやりそうなことだった。
怜は、東京にあるマンションにも銃を置いている。サイキの別宅や、本家にまではおそらく入り込めないだろうがマンションで銃を確認したのは間違いないと、考えるべきだった。
思いもしないところから自分のほころびが生じており、詰めの甘さに彼は臍を噛む気持ちだった。あの時応戦せず捕まれば、さりとて問題は大きくなっていただろう。
言い訳を考えなくてはならない。そして、適切な人物の名前を探し出し、フレデリックに告げない限りは、あの男は怜の、本当の背後の組織に辿り着きかねなかった。そうなれば、自分は破滅するしかない。
怜はゆっくりとデスクの引き出しを閉じると、気持ちを切り替えリビングへと向かって行った。
ニューヨークの夜景は素晴らしく、ガラス越しに広がっている。リビングソファのローテーブルには綺麗に並べられたオレンジと、鴨とクラッカーが置かれていた。酒はタンブラーと氷、コニャックのクルボアジェ・エッセンスが用意されている。
明かりは夜景を楽しむために絞ってあり、全面はめ殺しになっている窓は、その瞬きを存分に示していた。圧巻の夜景だった。
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