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「ちよっと待ってよ。一応、予定は組んであるんだし、時間の都合とかもあるんだから…」
「そんなのどうでもいじゃん! こんな凄い情報、放置したら損するよ!」
熱心に言われても、何が凄い情報なのか全く判らない。だから何がと問うのだけれど、友達は凄いを連呼するばかりで、内容は少しも話してくれない。
そのあげく。
「もーいい! アタシ一人で行く! アンタはガイドブック通りの観光したら?」
苛立ちを隠しもせず、店を出て行く。その後ろ姿を追いかけようとしたけれど、帰りの列車に間に合う時間まで自由行動! と叫ばれ、目の前で店の扉を閉められた。
もう、何が何だか判らない。ノートを何度見返してもそこのページは白紙だし、凄いとはしゃぎまくるような書き込みもない。
そっちがその気なら、もうそれでいいよ。
私の方も、一方的な友達の態度にかなり腹を立てていたので、こちらはこちらでガイドブック通りの観光をしようと決め、店を出た。
そして数時間後。
私は宿泊予定のホテルのロビーにいた。
駅近くのホテルで、来た時に場所の確認はしている。
あれから何回か友達に電話をしてみたけれど、電源を切っているらしく、繋がることはなかった。だからどこかで落ち合うことを諦めてホテルに来たのだ。
どこをほっつき歩いているのかは知らないけれど、ここで待っていれば姿を現す。そう思い、ロビーのソファに座っていたのだが、友達は一向に姿を現さない。
まさか、どこかで事故にでも遭ったのでは…そんな不吉な考えが頭をよぎった時だった。
ふいに着メロが鳴った。見ると、友達から電話がかかってきている。
慌てて出ると、こちらが何か言うより早く大声が響いた。
「ねぇ? 今どこ?!」
「え、と、ホテルのロビーだけど…」
「あ。結構近い。なら大丈夫だね。今から言う場所にすぐ来て」
「近いって、今どこ? その場所って…」
「それは-------」
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