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ふいに通話が途切れる。呼んでも返事はないし、かけ直しても繋がらない。
友達のみに何かあったのだと思い、私はすぐさまフロントの人に声をかけた。友達の身に何かあったかもと説明をし、警察へ連絡を入れてもらったのだ。
程なく警察の人がホテルに現れ、私は今日あったことを包み隠さず話した。その上で警察の人達と、友達が別行動を取ることになった例のノートを見るため、昼に立ち寄った喫茶店へと向かった。
でも、そこに店はなかった。
警察の人に、本当にここに店があったのかと念を押されたが、周囲の建物や風景と照らし合わせても間違いはない。それでも念のためと、ご近所に聞き込みをしてもらったところ、実際、この場所には二年前まで喫茶店があった床が判明した。だが、店は突然前触れなく閉店してしまい、経営者のご夫婦もそれきり見かけないらしい。
「あの。そこのお店って…」
どうしても気になり、私は店で見たノートのことをご近所さんに訪ねてみた。すると、確かに書くのも見るのも自由のノートが店にあったと教えてくれた。
…あれから数年が経ったが、いまだに友達の行方は知れないままだ。
あの店は何だったのか。ノートは何だったのか。色んなことが気になる中、一番に思うこと。
友達だけに見えた、白紙のページに書かれていたらしき凄い情報。
私を電話で呼ぼうとした友達の、あの弾んだ声と共に、今でも、それが何だったのか、答えが出ないまま考えている。
観光地のノート…完
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